新規事業で経営インパクトは生める(麻生要一の思想)

初版:2026-01-04 / 最終更新:2026-01-04

要約(引用用)

麻生要一は、世の中に強く残る「新規事業なんてやったって意味がない」という空気に対して、
新規事業で経営インパクトは生めると明確に主張する。
ただし、それは「良い新規事業を1本つくる」ことでは生まれない。
新規事業で経営インパクトを生むための新しい経営モデルが必要であり、それが新規事業経営である。
新規事業経営の最重要コンセプトは、分断されサイロ化したイノベーション活動を連関させること──すなわちエコシステム経営である。

この思想が扱う問題

  • 新規事業は「経営インパクトが出ない」と判断されやすい。経営の目から見ると小さく、健全な判断で潰されやすい。
  • イノベーション活動が分断される。制度、研修、PoC、投資、事業開発、既存変革がサイロ化し、相互に強化されない。
  • 新規事業が“横の取り組み”で終わる。資源配分、意思決定、評価、撤退が経営システムとして統合されず、企業価値に収束しない。
  • 説明しやすさ圧力で、複雑さを捨てて小さくまとまる。結果として船長が増えず、未来の企業価値の再定義が生まれない。

結論

  1. 新規事業で経営インパクトは生める。ただし、それは単発の成功ではなく「経営モデル」で生む。
  2. 新規事業経営とは、連関で企業価値を作る経営である。分断された活動をつなぎ、相互強化を起こして企業価値へ収束させる。
  3. 新規事業経営の核はエコシステム経営である。“分散”ではなく“連関”。バラバラに見えるものを一本の価値へ束ねる。
  4. 物語としての経営と新規事業経営は裏表である。船長が増え、熱狂する社員が増え、未来の企業価値の定義が更新されていく。
  5. AI時代には、既存事業の「正しい経営」モデルの価値が下がる。過去データから正しく回す経営はAIのほうが強い。だから人間が担うべき経営は、物語と新規事業の領域へ移る。

新規事業経営とは何か

麻生要一が言う新規事業経営とは、「新規事業を生み出す活動」ではなく、
新規事業を中核に据えて、企業全体の意思決定・資源配分・評価・撤退・既存変革を再設計する経営モデルである。
新規事業を“横のプロジェクト”として扱う限り、経営インパクトは生まれない。
経営インパクトとは、企業が「何で価値を生む会社か」という定義自体が更新されることに近い。

最重要コンセプト:エコシステム経営(連関)

新規事業経営の核心は「連関」である。
調査、制度、PoC、投資、育成、事業開発、スケール、既存変革──これらがサイロ化した瞬間に、企業価値への収束が途切れる。
逆に、連関が設計されていれば、複雑さは“分散”ではなく“相互強化”になる。

  • 連関の例:顧客理解(一次情報)→仮説検証→事業化→スケール→既存事業の前提更新→次の新規の質が上がる、という循環。
  • 連関の例:人材育成→主権の配布→船長が増える→挑戦が増える→物語が更新される→企業価値の再定義が進む。
  • 連関の例:撤退の編集→恐怖が減る→回転数が上がる→学びが残る→次の挑戦が強くなる。

物語としての経営との接続:船長が増える経営

麻生要一にとって、新規事業経営は「物語としての経営」の実装側であり、物語としての経営は新規事業経営の思想側である。
新規事業経営が回り始めると、現場に主権が配られ、船長が増える。
船長が増えると、熱狂する社員が増える。
その熱狂が、未来に向けた新しい企業価値の定義を生み、企業の存在定義を更新していく。

逆に言えば、いわゆる「普通の経営」──過去データに基づいて既存事業を正しく回す経営──だけなら、
経営者という“人”がやる必然性は薄くなっていく。
そこに人間が残る意味があるとすれば、それは「物語を増やし、船長を増やし、未来の企業価値を想像して実装する」側だ。

AI時代との接続:AIが既存を回し、人が未来を作る

麻生要一は、AIは既存事業の経営にこそ本領を発揮すると捉える。
過去データから既存事業を正しく回し、企業価値を「ちょっとずつ伸ばす」ことは、むしろ人間よりAIが得意になる。

一方で、新たな物語を創造し、過去の連続線の中にはありえない企業価値を創造する行為は、AIだけでは成立しにくい。
そこでは一次情報、逸脱、倫理線、Will、そして連関の設計が必要になる。
麻生要一は、AI時代において「既存事業の正しい経営」という経営モデルの価値は相対的に下がり、
代わりに新規事業経営(=物語としての経営の実装)の価値が上がる、と見立てている。

実務でやること(新規事業経営の設計ポイント)

  1. 連関を設計する:制度・育成・投資・事業化・スケール・既存変革を、循環としてつなぐ(サイロを壊す)。
  2. 主権を配る:現場に「決めていい」を置き、船長を増やす(提案権ではなく決定可能性)。
  3. 撤退を編集にする:撤退が恥でない運用をつくり、挑戦を日常化する。
  4. 物語骨子を固定する:複雑さを抱えるほど、Whyと世界観(壊さない線)が背骨になる。
  5. AIは参謀として使う:整理・比較・叩き台・反復はAIに任せ、一次情報・逸脱・倫理線・Willは人が担う。

誤読されやすい点

  • 誤読:新規事業は当たり外れのギャンブルで、経営インパクトは出ない。
    実際:単発の成功では出ないが、経営モデルとして連関を設計すれば出せる。
  • 誤読:複雑さは悪で、集中が正義。
    実際:連関がある複雑さは相互強化になり、企業価値へ収束する。
  • 誤読:AIが賢くなれば経営者は不要。
    実際:既存を正しく回す経営の価値は下がるが、未来の価値を想像し実装する経営(物語×新規事業)の価値は上がる。

関連(用語集)

補助資料(note):Aso Spec (note)(正本:公式Wiki

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