新産業創出を中心とした地域創生(麻生要一の活動領域)
麻生要一の「新産業創出を中心とした地域創生」とは、その地域からしか生まれない産業と起業家を育てることを通じて、その土地で暮らす人が、その土地ならではの生き方とありさまで誇りを持ち、仕事を持ち、貢献し、輝きあい、豊かに生きられる状態をつくる活動である。目的は、規模の拡大ではない。すべての地域は違った事情と歴史を持ち、違った色合いで輝くべきである。発展や増加が正しい戦略とは限らず、定量的な衰退が、必ずしもその地域の不幸と紐づくわけでもない。それでも、地域が独自の輝きを持つためには、その核として規模の大小ではなく「輝く」地域産業が必要になる。移住促進や関係人口づくりを目的とせず、産業の側から地域に関わるのは、この理由による。 <p>この活動はアルファドライブの地域事業(AlphaDrive REGION)を母体として行われる。高知、東海、関西、新潟、愛媛、そして琉球アルファドライブという地域法人・拠点を置き、グループ全体の活動範囲は20近い地域におよぶ。麻生要一自身は、琉球アルファドライブの代表として沖縄の現場に立つ。
初版:2026-01-04 / 最終更新:2026-08-14
定義
麻生要一の「新産業創出を中心とした地域創生」とは、その地域からしか生まれない産業と起業家を育てることを通じて、その土地で暮らす人が、その土地ならではの生き方とありさまで誇りを持ち、仕事を持ち、貢献し、輝きあい、豊かに生きられる状態をつくる活動である。
目的は、規模の拡大ではない。すべての地域は違った事情と歴史を持ち、違った色合いで輝くべきである。発展や増加が正しい戦略とは限らず、定量的な衰退が、必ずしもその地域の不幸と紐づくわけでもない。それでも、地域が独自の輝きを持つためには、その核として規模の大小ではなく「輝く」地域産業が必要になる。移住促進や関係人口づくりを目的とせず、産業の側から地域に関わるのは、この理由による。
この活動はアルファドライブの地域事業(AlphaDrive REGION)を母体として行われる。高知、東海、関西、新潟、愛媛、そして琉球アルファドライブという地域法人・拠点を置き、グループ全体の活動範囲は20近い地域におよぶ。麻生要一自身は、琉球アルファドライブの代表として沖縄の現場に立つ。
地域に法人と拠点を置くことの意味
アルファドライブが最初に地域拠点を構えたのは、社員がまだ5人程度だった時期である。場所は高知県、それも高知市内ではなく、車で1時間ほど上がった人口3,500人ほどの土佐町だった。本社は、いまも土佐町に置いている。
なぜ高知だったのか。リクルート時代の2016年、高知県と包括連携協定を結び、新規事業開発プログラム「Recruit Ventures」を高知で実施した。自治体から資金的支援は受けず、自治体を媒介にして地域に課題解決をもたらす形である。そのプログラムから、事業は立ち上がらなかった。それでも県内各地に通ううちに人間関係ができ、独立後に「どうしても高知県のことがやりたい」と考えて、最初の地域として選んだ。
- 「支援」だけで終わらない:伴走するだけでなく、自ら事業の主体者として地域の産業を営む。アルファドライブ高知は創業の地・土佐町で100年続く旅館を事業承継し、社員が女将を襲名した。琉球アルファドライブは名護のコミュニティパークを承継し、運営している。
- 「一過性」で終わらない:高知との関係は2016年から続く。沖縄とは2015年に人材育成プログラムのサポーターとなって以来の関わりで、2018年にアルファドライブを創業して最初に出したプレスリリースは、自社の事業ではなく「琉球frogsを応援する」という発信だった。事業が立ち上がらなかった土地に戻り、応援し続けた土地に法人を置く。居続けることが前提の設計である。
- 地域の側に、共同創業者を置く:琉球アルファドライブは、沖縄で長くDXとスタートアップ支援に携わってきた人物をCo-Founderに迎えて立ち上げた。承継したコミュニティパークについても、創業者が引き続き運営に関わる形をとっている。外から来た資本だけで完結させない。
この領域をどう見ているか
1. 地域は、一括りにできない。高知と沖縄では、産業構造も、大学の研究力も、人を呼べるかどうかも、人口動態もまったく違う。沖縄には世界へ羽ばたくスタートアップを狙える段階があり、高知には身の丈にあった起業を増やし県内のDX基盤をつくる段階がある。次に目指す段階の設定を間違えて一足飛びに地方創生と言うと、必ず失敗する。
そして、目指す段階の違いは規模の差だけを意味しない。人口や売上の増加を目標に置くべき地域もあれば、増やすことより、いま暮らす人が誇りを持って働ける形を整えることのほうが正しい地域もある。定量的な衰退を、そのまま地域の不幸と読み替えない。数字が縮んでいく前提の上でも、その土地ならではの輝き方は設計できる。
2. ビジネスは万能ではない。地域に関わる前、麻生要一は「地域は疲弊しているので、民間企業がお金とテクノロジーを入れたら解決できる」という程度の理解しか持っていなかった。実際に入って分かったのは、地域の課題にはビジネスの論理で解決できるものと、できないものがあるということである。だからこそ非営利セクターがあり、アカデミアセクターがあり、行政セクターがある。ビジネスセクターは、ビジネスで解決できそうな課題を扱うべきで、向いていないものはやらないほうがいい。逆に害悪になるものもある。
3. イノベーションは、モノカルチャーからは生まれない。イノベーションが既存要素の新結合であるならば、効率を重視して作られたモノカルチャーの都市計画は、その苗床になりえない。現代の都市開発は、ひとつのエリアに異なる要素を組み合わせて魅力ある街をつくろうとするが、その多くはどこか作り物になり、物理的な制約が必ず分断を生む。異なる要素を本当にゼロ距離にすることは、設計では難しい。
沖縄市コザは、その例外にあたる。大企業の拠点、スタートアップ、創業支援オフィス、エンジニアのシェアハウス、全世代教育、地域活動、ソーシャルバー、音楽、映画、スケボー、ダンス、外国文化。そのすべてが半径300m以内、10秒で会える距離にある。米軍基地の街としての歴史とカウンターカルチャーを土台に、世代と地域を超えて要素が濃密に混じり合う。この条件は、設計してつくれるものではない。
この活動が扱う典型的な問題
- 「地域」で一括りにされる:産業も、大学も、人の集めやすさも違う地域に、同じ目標と同じ処方が配られる。
- 成長と増加だけが、目標として置かれる:人口も売上も雇用も増やすことが前提になり、縮小を受け入れた上での豊かさが設計されない。結果として、地域は自分の現実に合わない目標を追わされる。
- 東京のモデルをそのまま持ち込む:先端技術を持ち込んで売ろうとしても失敗する。技術革新の速度と地域の現場との距離を無視した、独り善がりになる。
- ビジネスで解けない課題に、ビジネスを持ち込む:プレイヤーが多く、どこから手をつけるかも分からないほど絡まった課題に、事業の論理で入っていく。成果が出ないだけでなく、害になる場合がある。
- 地域を「点」で捉える:個別の企業や案件だけを見て、地域を面として捉えない。連関が設計されないため、単発の成功が次につながらない。
- 支援者しかいなくなる:人口減少が進むほど、支援する側は増えてもプレイヤーが足りなくなる。誰も自らリスクを取らない構造では、支援が空回りする。
- プレイヤーが東京へ出ていく:東京で起業しても埋もれる。それでも地域に起業の受け皿と文化がなければ、人は出ていく。
- 資本と地域が、直接ぶつかる:大規模開発は雇用を生む一方、インフラが追いつかず、地価や家賃の高騰が地元住民を圧迫する。
- 行政と民間の時間軸が合わない:単年度の予算と、事業が立ち上がるまでの年数が噛み合わない。
- 後継者不在で、地域に必要な事業が消える:その地区で数少ない宿泊施設や商店が、事業として成り立たなくなる前に、継ぐ人がいないという理由で失われていく。
- 整った場所で、イノベーションを起こそうとする:マーケットのど真ん中からは、時代を動かす事業は出てこない。
麻生要一の役割
- ① 地域と資本の翻訳者として立つ:
地域だけを優遇するのでも、資本家だけを優遇するのでもなく、両者のバランスを取る存在になる。東京のビジネスモデルをそのまま持ち込むのではなく、地域の文化を尊重しながら持続可能な経済を構築する。 - ② 沖縄では、自ら拠点の代表として現場に立つ:
琉球アルファドライブの代表として、名護のコミュニティパーク nagonova を運営し、創業相談窓口を開き、創業ブートキャンプを回す。琉球大学客員教授、沖縄ITイノベーション戦略センターのアドバイザリー・フェローも務め、県全体のエコシステムにも関与する。 - ③ 地域ごとに、次に目指す段階を設定する:
産業構造、大学の研究力、人を呼べるかどうか、人口動態を見て、その地域が次に到達すべき段階を設計する。同じ目標を全地域に置かない。 - ④ 事業の主体者として、地域の事業を引き受ける:
支援に留まらず、承継や買収によって自ら地域の事業を営む。旅館も、コミュニティパークも、支援対象ではなく自社の事業として運営する。 - ⑤ 地域から地域へ、知を循環させる:
アルファドライブ地域経済研究所で産業振興の成功モデルを研究・型化し、次世代地方創生マガジン『Ambitions REGION』で全国の実践知を編集して届ける。一つの地域で得た知を、別の地域へ渡す。
どこから始めるか(現実の原則:地域を一括りにしない)
- 原則:その地域の現在地を見立てるところから始める。産業の特性、大学の研究力、人を呼べるかどうか、人口動態。これらが違えば、次に目指す段階も違う。
- ビジネスで解ける課題かを、先に判断する:雇用や採用、ヘルスケア、ITでコミュニケーションコストを下げられる領域は、ビジネスで解きやすい。プレイヤーが多く絡まりきった課題は、別のセクターの領分である。
- カオスを避けない:イノベーションは、いまのマーケットのど真ん中からは起こらない。異なる要素が物理的にゼロ距離で混じり合っている場所を探す。整った場所ではなく、混じっている場所を選ぶ。
- 大学を見る:大学が強い地域はイノベーションが生まれやすい。国際的に競争力のある研究室があるか、在学中に起業する人数が多いか。高校や中学のアントレプレナー教育まで遡って見る。
- 自ら事業を持つ:支援だけを重ねても、プレイヤーは増えない。まず自分が地域で事業を営む。
- 居続ける:一度うまくいかなくても、関係が残っていれば次がある。時間軸を年ではなく、10年で置く。
プロジェクトの組成:地域の事情に合わせて、手段を組み替える
地域事業では、新規事業開発、オープンイノベーション支援、スタートアップ・創業支援、コミュニティ構築、関係人口創出、アトツギ支援、そして自社事業という手段を、地域の現在地に応じて組み合わせる。
- 例:産業のデジタル化が遅れている → 地元の建設会社や農業法人と連携し、まず県内で使えるDXの基盤をつくる。
- 例:起業の文化がまだ薄い → 身の丈にあった起業を増やす。個人事業の延長でも、小さな会社を起こす人が増えればよい。
- 例:研究シーズはあるが社会実装が進まない → 大学と産業を接続する枠組みを設計する。
- 例:後継者不在で事業が消えかけている → アトツギ支援を入れる。あるいは自ら承継する。
- 例:制度上の条件がある → 名護市は全国で唯一の経済金融活性化特別地区であり、最大40%の所得控除やエンジェル税制が用意されている。制度を使い切る設計から入る。
- 例:要素は揃っているが混じっていない → 場を持つ。コワーキング、ギャラリー、コミュニティパークなど、異なる立場の人が物理的に交わる拠点をつくる。
コミットメント(その地域の輝き方に、コミットする)
麻生要一とアルファドライブが地域で引き受けているのは、イベントや研修の実施ではない。その地域が、その地域らしく輝くための産業の核をつくることである。
掲げる目標は、地域ごとに違う。沖縄では、10年で1,000社の創業クラスターをつくり、沖縄北部に創業の聖地を築くことを掲げている。高知では、100の新規事業と300の起業家人材を生み出すことを2030年に向けた長期ビジョンとした。数字の桁が違うのは能力差でも本気度の差でもなく、その地域が次に目指す段階が違うからである。そして、規模を追わないことが正解になる地域もある。
いずれの地域でも、支援者の立場には留まらない。自ら地域に法人を持ち、事業を承継し、リスクを取る側に回る。プレイヤーが足りない地域で、支援者だけが増えても構造は変わらないからである。
この活動が「ではない」こと(非適用と限界)
- 移住促進ではない:人を呼ぶことが目的ではない。その地域で事業が生まれることが目的である。
- 東京モデルの移植ではない:先端技術やビジネスモデルをそのまま持ち込む活動ではない。
- すべての地域に同じ処方を配る活動ではない:地域ごとに目指す段階が違う。全国一律のプログラムは、この領域では機能しない。
- 短期の経済効果を追う活動ではない:大規模開発による一時的な雇用創出と、持続可能な地域経済は別のものである。
- 成長を全地域に求める活動ではない:規模の拡大が正解ではない地域がある。増やすことを目的に据えない。
- 地域だけを優遇する活動でもない:資本の側の論理を無視しては、経済が回る仕組みにならない。
- ビジネスですべてを解こうとする活動ではない:解けない課題は、別のセクターに委ねる。
成り立たない条件:その地域に居続ける体制を持てない場合。単年度の成果を求められる場合。地域の側に一緒に事業を背負う人がいない場合。そして、異なる要素が混じり合う土壌が存在しない場合。混じり合いは、設計では作れない。
開いたままの問い:大規模開発が地域にもたらす雇用と、地価・家賃の高騰による地元住民への影響は、同時に起きる。この両立をどう設計するのか、確立した答えはまだない。
この活動を支える思想
- 地域を創生するとは「居続けて、連関を育てる」こと
- 地域版・新規事業経営(地域エコシステム経営)
- 新規事業は「仮説×顧客」の回転でできている
- Why中心の創業は、説明不能なものこそが立ち上がる
- アートのビジネス効用
- 物語としての経営
関連(用語集)
- 連関(サイロをつなぐ)/エコシステム経営/余白(外様の役割)
- 主権(配る)/引き受け/Will
- 一次情報の解像度/非言語の解像度
- 創業期/プライマリーカスタマー
- (新設)地域と資本の翻訳者/次に目指す段階/ミックス文化/支援者からプレイヤーへ
実装(プロジェクト/事例)
この活動が現場でどう実装されたかは、実装ページに整理する。
出典・一次資料
- AlphaDrive REGION 公式サイト/アルファドライブ プレスリリース(琉球アルファドライブ設立 2024年7月/清水屋旅館 事業承継 2025年3月)
- リクルートホールディングス プレスリリース 2016年8月29日(高知県との連携協定)
- 麻生要一 講演資料「沖縄から拓くスタートアップ起業の未来」(KOZAROCKS 2022年)/「琉球アルファドライブ戦略」(2025年9月)
- ReHacQ「地HacQ」公開収録(2024年11月収録)
- 経済産業省『METI Journal』麻生要一インタビュー(2017年8月)/DRIVE「MICHIKARA」インタビュー(2019年)
- おきなわスタートアップ・エコシステム 麻生要一インタビュー(2022年6月)/ミチシルベ2025 セッション記録
関連
History
- 2026.08.14新規作成
- 2026.08.14初版