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麻生要一の「イノベーション領域の国際展開」に関する実装(プロジェクト/事例/実践知)

麻生要一による「イノベーション領域の国際展開」領域の実装は、まだ1年半しか経っていない。2025年7月に韓国のクロスボーダー企業と提携し、同年12月に資本参画した。第一号案件は7ヶ月で大企業とのPoCに到達し、そこから日本市場参入の型らしきものが見えている。ただし通した案件は、まだ一件である。本ページに記す「型」は、一件から抽出した仮説にすぎない。他の五領域と違い、ここには失敗の記録を書けるだけの蓄積がない。

初版:2026-08-14 / 最終更新:2026-08-14

定義

麻生要一の実装とは、思想を具体的な事業、団体、プログラム、作品として形にしたものの総称である。六つの活動領域それぞれに対応する実装ページが置かれ、何を、どのような条件で、どこまでやったかを記録する。事例紹介や実績のカタログではなく、思想がどの地点で現実と接触し、どこで想定と食い違ったかを残すことを目的とする。

本ページは、そのうちイノベーション領域の国際展開に対応する実装を記録する。

要約(引用用)

この領域の実装は、まだ1年半しか経っていない。2025年7月に韓国のクロスボーダー企業と提携し、同年12月に資本参画した。第一号案件は7ヶ月で大企業とのPoCに到達し、そこから日本市場参入の型らしきものが見えている。ただし通した案件は、まだ一件である。本ページに記す「型」は、一件から抽出した仮説にすぎない。他の五領域と違い、ここには失敗の記録を書けるだけの蓄積がない。

実装1:韓国のクロスボーダー企業と組む(2025年7月〜)

何を、どのような条件で。2025年7月4日、韓国済州島に本社を置く Synapse International Co.,Ltd. と戦略的提携を結び、韓国進出を開始した。同社は2024年7月設立のCross-border Development Companyで、AIのバックグラウンドを持ち幼少期に大学入学資格を取得した17歳のCEOが率いる。韓国・沖縄・台湾・セブなどの島をつなぐ「Island Links Project」を稼働させている。

出会いの経路。この提携は、海外パートナーの探索から始まったものではない。沖縄がアジアにひらかれていく流れの中で、いちはやくアジア各国とのパイプを切り開いてきた沖縄ITイノベーション戦略センターのネットワークから Synapse International と出会い、相互理解と協議を重ねて基本合意に至っている。地域での関係が、国際展開の入口になった。

判断と介入。

  • 抽象的な連携協定にせず、具体的なプロダクトから始めた。第一弾として、韓国のグリーンテックスタートアップ Taiga Global Inc. が持つ空間緑化ソリューションを日本市場へ輸入する実証事業を、2025年7月に開始した。
  • 方向を、輸入から始めた。日本企業の海外進出支援ではなく、海外企業の日本市場導入を第一弾に置いた。相手国側に提供できる価値を先に作る順序である。
  • 提携から、資本参画へ進めた。2025年12月、Synapse International の第三者割当増資を引き受け、同社にとって初めてかつ唯一の外部株主となった。これにより、同社が持つ韓国内での広範なビジネスネットワークを、グループのアセットとして活用できる状態にした。提携で案件を動かしてから資本に踏み込む順序をとっている。
  • 英語での情報発信を、同時に立ち上げた。資本参画にあわせて英語版コーポレートサイトを開設した。

実装2:7ヶ月で、大企業とのPoCに到達する(Taiga Global 案件)

何を、どのような条件で。Taiga Global Inc. は韓国・京畿道のグリーンテック企業で、独自の遺伝子解析技術によって「水・光・土なしで最長12ヶ月生息できる苔」を生み出している。ブランド名は mosslab。CES Innovation Award 2024、iF Design Award、IDEA Design Award などの受賞歴を持ち、B2Cで築いたブランドを基盤に、B2B展開を始める段階にあった。技術力とブランドはあるが、日本のB2B市場での検証はこれからという状態から始まっている。

経過。

  • 4月末:ファーストコンタクト。
  • 5月:Taiga Global と AlphaDrive International で MOU 締結。
  • 6月:日本貿易振興機構(JETRO)2025年度「対内直接投資促進事業費補助金」に採択。検証の原資を確保した。
  • 11月:Japan Home Show 2025 に出展。国内最大級の不動産・住宅関連展示会で、200を超える見込み顧客を獲得。同月、パナソニック エレクトリックワークス社と ReGACY Innovation Group が共同開催する「Panasonic Accelerator by Electric Works Company」に採択。
  • その後:パナソニックとの共同でプロトタイプを製作し、多数の日本の顧客に提示。プレセールス段階に入り、プロジェクトは約1,000万円を生んでいる。

判断と介入。この案件で実際に行ったのは、戦略の設計だけではない。市場分析、競合分析、PoC提案書、営業資料といった資料を、言語の壁と商習慣の違いを越えるために作り込んだ。関西圏での営業活動にも自ら出向いている。コンサルティングではなく、共同で事業開発と販売を行う立場をとった。

この案件から見えた、日本市場参入の型(現時点の仮説)

Taiga Global の案件を通して、日本市場に入るための要点らしきものが三つ見えている。ただし、これは一件の案件から抽出したものであり、検証された方法論ではない。二件目、三件目で同じ形が成立するかは、まだ分かっていない。

1. 意思決定の構造を、先に読む。担当者や課長が製品を気に入っても、それが購買や採用を意味しない。日本の大企業では、担当者、課長、部長、本部長、事業部長、経営役員と複数の関係者が意思決定に関わる。そしてどの部門を実際の顧客とするかの選定が、決定的に重要になる。新規事業部門なのか、既存事業部門なのか、DX推進部門なのか、サステナビリティ部門なのか。大企業の内部では部門ごとに事情がまったく異なり、しかも互いに繋がっていない。誰が最良のパートナーかを、戦略的に設計する必要がある。

2. 最初の一件を、慎重に選ぶ。日本企業は前例を強く重視する。一社が採用に成功すると、同業他社が追随する傾向がある。したがって最初のケーススタディ相手を選ぶ際は、業界への波及効果、課題の切迫度、そして社内承認を得られる見込みの三つを考慮する。ここで正しい第一号をつくれれば、その後の機会が大きく開く。

3. 予算サイクルから逆算する。日本の大企業では、予算は概ね12月から5月にかけて編成され、翌年4月から翌々年3月にかけて執行される。したがって、11月までに実績を示せなければ、次の機会は1年後になる。ただしこの論理は、価格帯によって効き方が変わる。100万円未満の商材は担当者レベルの決裁で動くため、このサイクルに縛られない。1,000万円を超える案件や、パイロットプラントやサンプルを要する深い技術の場合は、本社承認が必要になり、予算編成の理解が不可欠になる。

実装3:現地企業の日本市場検証を、実務で支える(2026年4月)

何を、どのような条件で。2026年4月、東京ビッグサイトで開催された SusHi Tech Tokyo 2026 において、韓国の屋内位置測位技術スタートアップ ipinlabs の出展を支援した。同展示会は東京都が主催するアジア最大規模のグローバルイノベーションカンファレンスで、約770社のスタートアップと6万人規模の参加者が集まる。ipinlabs の出展はソウル経済振興院(SBA)とソウルスタートアップハブ孔徳の支援によるもので、AlphaDrive は現地パートナーとして実務を担った。

判断と介入。ブースの現場運営を実務として引き受け、A0サイズのパネルを一枚用意した。「GPSが届かない空間で正確な位置を見つける」というメッセージを、一目で読み取れるビジュアルにしている。

結果。3日間でブースを訪れた人は300名を超え、製造、ヘルスケア、不動産、物流、公共機関と分野は多岐にわたった。対話を重ねるなかで、日本市場でも屋内空間の位置データ不在が実際の課題になっていることが確認された。

支援を受けた側の記録から分かったこと。ipinlabs は出展記録を自社ブログで公開しており、そこにはこう書かれている。これまで複数の展示会に出てきたが、パネルがそれほど重要だとは感じていなかった。今回は違った。ブースの前で人を止めるのは、結局のところ、遠くからでも一度で読み取れる一枚の画像だった。そして、一人で進めていたら決して届かなかった相手と席を持てたのは、パートナーの支援があったからだと記している。

実装4:韓国で、理論を英語で話す(2026年3月)

何を、どのような条件で。2026年3月11日、ソウルで開催された SYNAPSING Innovation Meetup(SIM 2026)に登壇した。Synapse International、AlphaDrive、AVING NEWS の共催による招待制のエグゼクティブ・マイクロカンファレンスで、スタートアップ創業者、大企業のオープンイノベーション責任者、投資家、メディアが集まる場である。麻生要一は基調講演「How Japanese Corporates Innovate Through New Business」を、英語で行った。冒頭では韓国語で挨拶している。

何を話したか。日本の大企業がなぜ新規事業でイノベーションを起こせるようになったのかを、二つの戦略として説明した。ひとつは新規事業創造を教えられるものにすること。営業という仕事に段階があるように、イノベーションもプロセスとして定義できれば、学習可能になる。もうひとつはインパクトを拡大するためのイノベーション経営システムを構築すること。18の経営システムを定義したうえで、最も重要なのは各システムを繋ぐことだと述べている。

そして「仮説と顧客」の回転と、300という回転数を、23,000件を超えるケースから導かれた数字として提示した。確認、事例、調査、会議、資料、社内、上司、先輩、競合という九つの言葉をすべて消し、仮説と顧客だけに集中する。この理論を、日本国外の聴衆に対して初めて体系的に話している。

日本のイノベーション10年史として整理した。2014年以降、日本のスタートアップ投資は急拡大し、その相当部分がCVC、つまり大企業のイノベーション予算から来ていた。しかし前半の10年は「スタートアップへのイノベーションの外注」の時代だった。数多くのアクセラレータープログラムとオープンイノベーションプログラムが立ち上がったが、目的が「大企業とスタートアップを繋ぐこと」に留まり、大企業の内部にはイノベーションが生まれなかった。イノベーションの根幹そのものを完全に外注することは、原理的に不可能だからである。日本企業がこれを認識し始めた時期に、2018年、アルファドライブが設立された。

締めの言葉。「日本と韓国の間の国境を壊しましょう。一緒にイノベーションを創りましょう。私たちは、こんなにも近い国なのだから」。

想定と食い違った地点

1. 出会いは、探索ではなく地域から来た。海外パートナーを探しに行った結果ではない。沖縄で積み上げてきた関係のネットワークから、韓国のパートナーに出会っている。国際展開の入口が、地域創生の活動の中にあった。設計していた経路ではない。

2. 効いたのは、上流の設計ではなかった。展示会支援で ipinlabs 側が価値として挙げたのは、パネル一枚の視認性と、当日その場に人がいたことである。事業開発能力の構築という目的に対して、実際に求められたのは現場の実務だった。

3. 双方向のうち、片方しか動いていない。韓国から日本へ入れる方向は、実証、展示会、大企業アクセラレーター採択、プレセールスまで一件通った。日本から韓国へ出す方向は、まだ動いていない。日本スタートアップの韓国進出プロジェクトは早期の立ち上げを掲げているが、2026年8月時点で実績はない。双方向の事業体という設計のうち、成立を確認できているのは片道だけである。

4. 型が見えたが、それは一件からの抽出である。7ヶ月で大企業とのPoCに到達したことで、日本市場参入の要点らしきものが三つ見えた。しかしこれは、n=1から導いた仮説にすぎない。意思決定構造の読み方も、最初の一件の選び方も、予算サイクルからの逆算も、二件目で同じように機能するかどうかは、これから確かめる。皮肉なことに、この領域で最も語りやすくなったものが、最も検証されていない。

どこまでやったか、どこで止まっているか

到達している地点:戦略的提携(2025年7月)、資本参画と唯一の外部株主化(2025年12月)、英語版サイト開設、韓国から日本への輸入案件を7ヶ月で大企業アクセラレーター採択まで接続、プレセールスと約1,000万円の売上創出、現地企業の日本市場検証支援、韓国での理論の英語発信。

止まっている、あるいは着手前の地点:日韓の共同事業体の具体的な形は構築の途上にある。日本企業の韓国進出プロジェクトは未着手。韓国を足がかりとしたアジア圏全体への展開は構想段階。二件目、三件目の輸入案件は進行中だが結果は出ていない。そして全現場が海外市場を前提に事業を設計するという方針は、2026年に置かれたばかりで、現場での定着は確認されていない。

思想から実装へ持ち込んだこと(往路)

  • 仮説×顧客の回転を、国境を越えた文脈で回した。市場調査で終わらせず、実証と展示会という形で顧客に当てにいく。この理論をそのまま海外案件に適用し、韓国の聴衆にも同じ理論を英語で提示している。
  • プライマリーカスタマーの発想を、部門の選定に適用した。大企業のどの部門を顧客とするかを戦略的に決める。相手が巨大であるほど、内部は分断されている。
  • 主権の配布を、資本関係で設計した。唯一の外部株主として入りながら、相手企業の経営を握りにいく形をとっていない。韓国内のネットワークは相手側が持ち続け、それをグループのアセットとして活用する構造にしている。

実装から思想へ還元したこと(復路)

  • 国際展開の入口は、国際の側にあるとは限らない。地域で積み上げた関係が、国境を越える経路を運んできた。領域を分けて設計するほど、この経路は見落とされる。
  • 越境で不足しているのは、判断材料ではなく実務の担い手である。技術力も受賞歴もある企業が、パネル一枚と当日の人手で結果が変わる。上流の戦略よりも、現場に立てるかどうかが効く局面がある。
  • 双方向は、片方から始めるしかない。相手国に差し出せる価値を先に作らないと、対等な関係にならない。だから輸入から始めた。ただし片方が回っただけでは、双方向の事業体が成立したことにはならない。
  • 理論は、国境を越えても通じた。ただし通じたのは聴衆の反応までであり、韓国企業の現場で300回転が実際に回るかは、これから確かめる。
  • n=1で見えたものを、型と呼ばない。一件通ると、経路が言語化できてしまう。言語化できると、確立したものとして語りたくなる。この誘惑に抵抗することが、この段階での正しさである。

再現できる条件/できない条件

再現できる(と考えている):相手国のビジネスネットワークを持つパートナーがいる場合。具体的なプロダクトを一つ決めて実証から始められる場合。公的な制度を初期の検証コストに充てられる場合。現場の実務を自ら担える体制がある場合。

再現できない、あるいはまだ分からない:相手国での販売主体まで担う形が成立するかは未検証である。日本から海外へ出す方向が同じ型で回るかも分かっていない。一国での経験を他国へそのまま移せるかどうかも、未確認のままである。そして、7ヶ月という速度が再現できるものなのか、この案件に固有の条件によるものなのかも、まだ判別できない。

関連ページ

出典

  • アルファドライブ プレスリリース 2025年7月4日(Synapse International との提携により韓国進出を開始)/2025年12月5日(Synapse International へ資本参画)
  • SYNAPSING Innovation Meetup 2026 講演記録(2026年3月11日、ソウル。麻生要一 基調講演、深谷航 ケーススタディ)
  • ipinlabs 公式ブログ「SusHi Tech Tokyo 2026」出展記録(2026年5月)
  • パナソニック ニュースリリース(Panasonic Accelerator by Electric Works Company 採択企業決定)
  • AlphaDrive International 英語版コーポレートサイト
  • 麻生要一 社内キックオフ資料(2026年)

History

  1. 2026.08.14新規作成
  2. 2026.08.14初版

活動:イノベーション領域の国際展開

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